※雲雀+黒山本です。
朝の登校時間、並盛中学校の前では風紀委員会が抜き打ちで服装検査を行っていた。
「そこ、ネクタイをちゃんと締めろ」
「ズボンはきちんと穿け」
「鞄に付属物が多すぎる」
注意された者達は不満を募らせるが、表に出した瞬間の報復が恐ろしいので、ただ黙って直していた。
そんな中、ネクタイ不備の常習犯がやってきた。
「またか・・・」
山本武は風紀委員会の方を一瞥すると、にこりと笑って走り出した。
『本ッ当、唐突にやるのな』
ネクタイは一応、鞄の中に入っている。が、敢えて出さない。
走り出してすぐ、誰かに足を崩された。
「うおっ」
が、山本は自慢の反射神経で対応し、踏み止まった。
「また君かい?」
ふー、と呆れるような溜息が背後から聞こえた。
振り返れば雲雀が、学ランを風になびかせて、腕を組んで、立っていた。
「おはよ、ヒバリ」
「・・・・・・」
雲雀は山本が向ける笑顔を怪訝そうに見た。
「反省文3枚、一週間の早朝登校、校門での挨拶、説教・・・君は一体何をすれば直してくれるんだろうね」
「さーな、無理じゃね?」
そう言って、山本は再び校舎へと身体を向けた。
「君はネクタイをしていない理由を知っていても?」
雲雀のその台詞に、山本は一歩を踏み出して止まった。
「僕が気付いていないと思ってた?」
「・・・性悪」
「君も随分小賢しいけどね」
そう言い返すと、雲雀は持っていた名簿の挟まったボードに書き始めた。
「山本武、ネクタイ忘れ・・・敢えて回数は言わないけど」
「そりゃ、どーも」
赤鉛筆がさらさらと名簿の上を走った。
「じゃ、オレはこれで」
「待ちなよ」
その静止に、「今度は何だ」と言わんばかりの表情で、山本は振り返った。すると胸に紙を押し付けられた。
「後で来なよ」
ネクタイの結び方、教えてあげるよ。
そういって、雲雀は踵を返し、校門の方へと歩いていった。
「・・・行きたく、ねーなぁ」
山本は押し付けられた公欠許可証を見て苦笑いをするしかなかった。
クラスの子が生徒会の仕事で「公欠」したときに、初めて「公欠」の意味を知りました。
そんなんとってまで、何を教える気なんでしょう、雲雀さん・・・。
2010/07/31 修正