微妙な距離感です。友人以上恋人未満的な。
雲雀さんがちょっと意地悪。山本が乙女(笑)




突然僕の前に、それは出された。
日付からして、この間の小テストのようだった。
山本の顔を見れば、いうもの表情がそこにある。

「ねぇ、何これ」
「国語のテスト」

そうだね、うん、確かにこれは国語の解答用紙に間違いない。それとも聞いた僕が馬鹿だったのかな。別に僕はこれは何の小テストと聞いたわけではない。僕が訊いたのはなぜこの点数を取ったのかの方だ。
 テストだから百点満点というわけではないだろう。いやそれで換算したらかなりひどい点数だろうこれは。

「一体どうしたら、こんな点数取れるの」
「さあなー?」

なんとも気の抜けた答えが返ってきた。この男にこの数字は何てことないということか。それもそれで悲しいものがあるような気がする。
 国語の解答用紙のほかにもう一枚解答用紙が机の上に置かれた。こちらは数字ばかりの羅列で、なぜか。

「・・・・・・」
「あ、それは数学なのな」

一転して正答率が上がっていた。目を通す限り丸が続き、応用問題らしきところが一つ間違っていたのみ。

「数学、得意なの」
「んー?そこまで得意じゃねーよ」

これは得意じゃなくて取れる点数ではない気がすると僕は思うが、

「じゃあこの点は」
「八割方、カン?」

さてこの答えにどう返事を返そうか。数学って、勘で解くものじゃないよね。こんなものは当然すぎる。かといってよかったね勘が冴えてなんて言うのもおかしいだろう。ちゃんと計算をして答えを出すべきものであろうに。どちらかと言うと、国語の方を勘で解くべきではなかろうか。さらに言えば高校になったらこれ全部、バツ打たれるかも知れないよ。攻めて注意は喚起しておくべきか。

「今度から、過程考えたら」
「でも、公式とかあんま覚えてねーし」

公式を覚えないで数学が解けるわけないだろう。
 そう言い返そうと僕は山本のほうを見た。

「・・・・何」
「・・・・・・」

何か期待の籠った目で僕のほうを見ていた。手元に解答用紙。答えはおそらく。

「教えないよ」
「ひっでー」

教えを請う前にまず自分で努力するのは当たり前のことだろう。
 そう言ってやればおとなしく食い下がった。どこか納得しきれてはいないようだったが、その態度が少し気に入ったからそのままにしておいた。しかしこの点数は危ないだろうな。このまま期末試験までこの点数を取ったら補習だろう。それは非常にまずいだろう。

「次の期末試験」
「ん?」
「学年順位一桁になったら教えてあげるよ」
「マジで?!」

僕に教えてもらえることがそんなに嬉しいのか、山本はソファに寝そべっていた状態から勢いよく起き上がると、机の前に飛び出てきた。

「約束だからな!」
「はいはい」

という僕の承諾の返事を聞くなり、山本は走って応接室を出て行った。
 しかし学年一桁をとれば教えることなど何一つないだろうということに果たして山本は気付いているのだろうか。僕が必ず約束を守るというような各省はどこから来るのだろうか。
 まぁ、あのひどい結果がどこまで這いあがるのかは見ものだと思った。




  *   *   *





 数日後、期末テスト明けの日のこと。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

上の沈黙は呆れた僕のもの。下の沈黙は今僕の目の前でにこにことしている山本のもの。
 まさか、ここまでのものとは。

「学年順位、五番」
「な、すげーだろ!」

通りで今日職員室が騒がしかったわけだ。
 まさか赤点常習犯(当然僕は知っていた)がいきなり五指に滑り込んでくるとは教師陣も思ってもみなかったことだろうね。
 正直僕も驚いた。それは学年順位五番に入ったことではない。山本の各教科の得点だ。全教科八割五分越えまでいくとは思ってもいなかった。

「これは勘じゃないんだよね」
「わかんなかったところは勘だけどな」

それが普通の試験だ。
 で、山本のことだからきっと忘れてはいないだろうあの約束を。覚えていた僕も僕だけど。

「約束、覚えてるよな」
「・・・まぁね」

さあ来た。今のこの男に何を教えろと言うのか。正直なにもない気がするんだけど。

「何を教えて欲しいの?今更」
「あー・・・」






五分経過・・・


「・・・・・・」







十分経過、


「・・・・・・・・・・」







十五分経過。


「・・・・・・いい加減にしてくれない」
相手が山本だから、僕はここまで我慢できたと思う。そうじゃなったら速攻で躊躇なく一撃で相手を沈めていた。
「ちょ、ちょっと待っていや待ってください!」
呆れて席を立った僕の腕を山本が掴んできた。バッドを散々振っているせいなのか握力は強かった。本気で痛い。
「わかったから、手離してよ」
そういえば手はちゃんと離れた。仕方なく僕は向かいに座り直した。
「もう一度聞くけど、何を教えてほしいの?」
「ヒバリのことが知りたい」

「どうして?」
「そりゃあ、ヒバリは俺のこと何でも知ってるだろ、なんでかわかんねーけど成績とかそういう個人情報まで。でも俺はヒバリのこと、『雲雀恭弥』って名前で風紀委員長やってる、それぐらいのことしか知らねーんだ。なんか不公平だろ?」
だから、ヒバリのことが知りたい。

不公平も何も別に隠しているわけじゃない。別段聞かれもしなかったから答える必要もないと思っていただけなんだけど。まあ、下手に調べ上げたら後が怖いだのなんだの噂されたりしているのは半分本当。誰だってプライベートに踏み込まれていい気はしないよね。
 聞かれた以上は約束もあるし、答えようかな。

「なら、話は僕の『家』でしようか」

そう言えば、山本の表情はこの上ない笑顔になった。僕も悪い気はしなかった。









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大幅修正。原型ほぼ皆無です。
最近どうもばってんよりたすのほうが書きやすい気がします。
また言ってるよこいつですね。
ひばりさんの口調が最近分からない。いろいろ混ざっているかもしれません。似非万歳(泣)


10/06/16 大幅加筆修正。