原作ベースの妄想です。
病院名はうろ覚え。
某日、並盛総合病院。
山本武は病室のベッドで横になっていた。医師から不随の宣告を受けたとき、これは夢だと何度思ったことか。だが覚めることは無かった。現実だった。
しかしそこで諦めないのが山本だった。
まず、他人の手を借りずに車椅子に乗る練習をした。松葉杖を使い、野球部で鍛えた肩と腕の筋肉を駆使した。以外にもすぐ出来るようになった。もう一人で動けるということで、つきっきりだった父親を無理矢理家に帰した。山本は病室の窓から、その背が消えるまで見続けていた。
その姿が見えなくなった途端、山本は不安に包まれた。野球、野球、野球。心から欲するがそれはもう叶わない。いっそ死んでしまいたい。それも叶わない。ツナ、獄寺、親父・・・。彼らが山本を掴んで離さない。
動かない足を胸に抱いて、山本は額を膝の上に乗せた。自分の脚なのに、ただの有機物にしか感じられなかった。
(・・・ッ)
言葉にできない感情が、涙という形で目から溢れた。
その時、病室の扉が開いた。面会時間はもう終わっているはずである。
一体誰だ。山本は顔を上げた。
「やぁ」
「ヒ、バリ・・・」
その姿を見て、来訪者に納得したと同時に驚きもした。確かに雲雀恭弥なら、面会時間など関係ない。しかしなぜ雲雀が。
雲雀はそのまま病室に入り、ベッドの脇に立て掛けられていたパイプ椅子を広げて座った。
そこで初めて、山本は雲雀の格好が違うことに気付いた。普段の学ランではなく、黒いスーツを着ていた。所々裂けている上、黒い染みも付いていた。「彼らを咬み殺してきたよ」
その言葉に、山本は目を見開いた。同時に目じりにたまっていた涙が流れ、脚に落ちた。
「彼らの処分は沢田綱吉が一任した」
「・・・そっか」
山本は小さく返事をした。ツナならば非道な処分を行わないと安心する自分もいれば、それを望む自分も確かに心の中に存在していた。
同時に、その戦いに馳せ参じることができなかった自分に悔しさがこみ上げた。仲間が戦っていたのに自分はここで何をしていたのか。近いうちにほかの仲間たちもここに来る。その時自分はどんな表情をして彼らを迎えるのだろうか。いつものままでいられる自信が、山本にはなかった。
そんな山本の心中を察したのか、雲雀は言った。
「好きなだけ暴れたら?」
「え?」
その言葉の意図が分からず、山本は雲雀を見た。
そこには真剣な顔をした雲雀がいた。
「なんだよ、そんないきなり・・・わけわかんねー」
「僕は彼らみたいに止めはしない」
「ッ・・・」
山本は雲雀から視線を外した。
本当は、その言葉に従ってこの場にある何もかもを壊してしまいたかった。
どうにかしてこの感情を消化したかった。
でも、それを躊躇ってしまう。
「そんなこと、するわけねーだろ」
山本は苦笑しながら、ベッドの上で拳を握った。 「そう」
まぁ、僕には関係ないから。
そう言って、雲雀は立ち上がった。そして立ち去ろうとしたところ、山本に腕をとられた。
「何?」
「・・・ごめん、ちょっと」
山本は顔を下に向けたまま言った。 「悪いけど、相手する気はないよ」
雲雀は山本の手を外した。しかし立ち去らず、ベッドの横に立った。
「や、そうじゃなくてさ、」
ツナたちに伝言頼みたいんだ。
「僕はそんなに暇じゃないんだけど」
「そんなこと言わずにさ」
窓側を向いて、ベッドに腰掛ける形で座り、山本は言った。
「ちょっとしばらくこっちには来ないでくれって」
「・・・・・・」
その言葉に、雲雀は少しだけ目を見開いて、しかし何も言わずそのまま踵を返して扉に向かった。今度は腕をとられることもなく、そのまま雲雀は病室を後にした。
途中一度だけ振り返った時、山本は「いつもの笑顔」で手を振っていた。
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妄想甚だしい小説です。
原作どうなっていくんでしょうか・・・
10/07/29 新規執筆