『何でオレ、ここにいるんだ?』


山本は座椅子に座り顔を伏せて考えた。

 突然呼ばれたかと思えば、風紀財団側のアジトに連れて行かれ、無駄に広い和室へと通された。
 右を見れば真っ白な襖。左を見れば外でもないのに庭園がある。獅子おどしの音が静かな空間の中よく響いた。


『綺麗な音なのな・・・じゃなくて』


山本は顔を上げて前を見た。


「どうかした?」

「い、いや・・・その」


机を挟んで向かいには、十年後の雲雀が和服姿でお茶を啜っている。表情もどこか穏やかで、沢田との修行に臨んでいるときの威厳や威圧はあまり感じられなかった。


『やっぱ、何か違うよなー』


山本の中の雲雀は、天上天下唯我独尊(獄寺談)というイメージが強かった。

「ねぇ」

「っはい!」


突然呼びかけられ、山本はつい大きな声で返事をしてしまった。そしてその様子に何を思ったのか、雲雀は苦笑混じりに微笑んだ。
 その表情に、山本は赤面しかけた。


「別に取って食うわけじゃないよ、今はね」

「?」


山本は言葉の意味、意図が分からず首をかしげた。その反応に、雲雀は納得し、話を戻した。


「服、サイズ合ってた?」


山本は今自分の着ている修行用の袴を見た。


「何か丁度良いっつーか、少し落ち着くんだよな、これ」

「そう」

 まぁ、十年後の君の私物だしね。

「・・・え?」


他にもミットとかボールもあるよ、とお茶を啜りながら言う雲雀を、山本は凝視した。今着ている和服を、山本は雲雀の私物だと思い込んでいて、ペイント弾で汚れるたびに申し訳ないと感じていた。
 そう言われてみれば、こんな青い袴を、雲雀が持っているはずがない。

 否、それ以前に。


「何で十年後のオレのものがこっちにあるんですか?」

オレボンゴレ側のアジトに住んでるんじゃ・・・


その問いかけに、雲雀は湯のみを置いた。


「僕は話しても構わないけど、一応口止めされているから」

「?」

『口止めするほど、大事なことなのか?』


雲雀は両手を和服の袖に仕舞った。


「そろそろ修行、再会じゃない?」

「そうだぞ」

「お!」


突然襖がスパンッ、と音を立てて開いた。視線を少し下げると、黒いスーツを着た赤ん坊リボーンが仁王立ちで立っていた。


「っし、行くか」

「先行っててくれねーか?オレはヒバリに話があるからな」

「りょーかい」


山本は身軽に立ち上がり、走って和室を出て行った。


「滑らないよう「うわっ」

「「・・・・・・・」」


襖から廊下を覗くと、見事に山本は滑ってこけていた。


「・・・遅かった?」

「みてーだな」


しかし山本は懲りずに、立ち上がるとまた走り出して去っていった。


「で、話って何?赤ん坊」

「ああ、そうだったな」


リボーンは雲雀を見上げ、不敵に笑った。


「お前今、寂しいか?」

「何馬鹿なこと言っているの」


雲雀はリボーンから視線をそらした。


「僕がそんなこと、思うわけないよ」

「そうか?」

「・・・・・・」

再びリボーンに目を向ければ、帽子のせいで表情が見えない。

「んじゃ、邪魔したな」

「赤ん坊ならいつでも歓迎するよ」


襖の陰からリボーンの姿が見えなくなると、雲雀は最初に座っていた場所に戻った。


「・・・・・・」


座る前に、雲雀は机の影に置かれた、砂に薄汚れた野球ボールを手に取った。


「あの時のボールか・・・」


雲雀は手の上でボールを転がした。

ふと、懐かしい声が聞こえた気がした。

















『ヒバリ、キャッチボールしねーか?』

『何、突然』

『いや、この辺いじってたらこれ出てきてさ』

『・・・野球ボール?』

『な、やろーぜ!』

『悪いけど、君のボールを素手で受けようとは思わないよ』

『そうか?』

『それに、負傷したらトンファー持てない』

『えー・・・あ、ミット俺持ってるし、貸すよ』

『・・・・・』

『な、なるべくセーブするから、な』

『・・・君、そこまでして僕とキャッチボールしたいの?』

『だって折角の機会だろ?オレ達滅多に会えねーんだしさ』

『・・・わかったよ』





























・・・主旨ずれました(T_T)