短い。
雨が降った。それはもう盛大にバケツをひっくり返したような土砂降りの雨が。
あのきれいな青空はどこへ行ってしまったのか。平和島静雄は一人傘を差さずに池袋の街を歩いていた。
(ああ今日の奴らもうざかったな)
全く俺が誰だかわかっているだろうにそれでもなぜ向かってくるのだろうか。
静雄は一人考えた。そのせいで今日も標識を二本、液晶テレビを一台、玄関のドアを三枚、鉄製の柵を一メートルほど無駄にしてしまった。標識は後からちゃんと差し込み直しておいた。テレビはつい最近家電製品屋に並んでいたものと同型だったなあと他人事のように思い出した。
おおそういえば今日は一台も自動販売機を投げ飛ばすことがなかったなということに気づいて、静雄は足を止めた。思考もそこで止まった。脳内に黒い人物が出てきた。
(・・・あああああぁぁぁっ!!)
なんで俺はあのノミ蟲野郎のことを思い出すんだ!!馬鹿か俺!!
静雄は燃え上がった怒りの炎を沈めようと努力した。空から降り注ぐ大量の雨粒もその消火に一躍買うかと思われたが、炎は大きくなるばかりだった。
ああそういえば一件アイツが関わってたじゃねーか!しかもかなりめんどくせぇやつだった!
(ぶっ殺す!)
雨は炎を前にして蒸発してしまい、全く意味をなさなかった。