付随。
廃墟は風通しが良かった。夜ともなれば気温も下がり、風も冷たく感じられた。臨也は冷えた指先をじっと眺めながら、傍で横になっている静雄の背を見た。規則正しく肩が上下していたが、寝てはいないようだった。臨也は静雄のすぐ横に寝転がった。少しだけ温かい感じがした。
すると体勢を変えようと、静雄は反対側を向いた。なぜかすぐ近くに呼吸音が聞こえ、静雄は目を開けた。すると、臨也と目があった。あまりに突然のことに静雄は頭がついていかなかった。鼻先十五センチほどに臨也がいた。
「……おい、何で」
「だって寒いの嫌だから」
何と自分勝手な。静雄は離れるために起き上がった。しかし臨也はすでに静雄の腰に手を回し、完全に寝る態勢に入っていた。まるで猫がじゃれつくように頭を擦りよせてきた。
「シズちゃんあったかーい…」
「は、な、れ、ろ」
そう言いながら臨也の頬に触れたのだが、それが異様に冷たかったため、振り払うに振り払えなくなった。そのまま凍え死んでしまえばいいのになんて思ったが、今回は借りがある。振り払うことを諦め、静雄は臨也に背を向けて横になった。背中に額が当たる感触があった。
「………本当、シズちゃんが人間だったらよかったのに」
小さな呟きだった。本音かどうかは図れない。
「……あぁ、俺も人間でありたかったよ」
静雄は自分の本音を語った。別に自分はあくまで人間だが、こんな膂力を持っていない人間でありたかった。
「早く戦争、終わんねーかな」
毎日戦場に駆り出されては精神がすり減る。怒りにまかせて力を奮うが、あとに残るのは虚無感と猜疑心だけだった。自分は何をしているのか。何のために。
背後から静かな呼吸音が聞こえ、静雄もそれに倣うように目を閉じた。
pixiv・novelist未収録分。